メンタリストで有名なDaiGoさんの『後悔しない超選択術』を通して、合理的な選択をして幸せに生きる方法をご紹介しています。
今回はその20回目です。
前回は、「選択力を鈍らせてしまう5つのバイアス」の中の、“正常性バイアス”についてお話ししました。
正常性バイアスとは、自分にとって都合の悪い情報を無視してしまうバイアスをいいます。
たとえば、自然災害が発生し、自治体などから避難勧告が出されているにもかかわらず、「以前は大丈夫だったから、今回も問題はないだろう」と、危険を知らせる情報を無視する、
あるいは、振り込め詐欺の電話がかかってきても、普段から「怪しいかどうかくらいはわかる。自分は騙されるほどバカじゃない」などと思っていると、怪しい様子や瞬間があっても見落として騙されてしまう、
ということは、正常性バイアスの働きといえます。
そんな正常性バイアスを避けて後悔しないためにはどうすればいいのでしょうか。
それには、「自分の判断力のなさ、選択する力のなさを認める」こと、といわれています。それが出発点なのです。
「自分には判断力がある」と思っていると、その根拠のない自信から正常性バイアスが働いて、重大な情報を見逃してしまうのですね。
こうした判断や能力への自信を持っている人ほど、実は状況を正確に判断できておらず、また能力も持ち合わせていないことを、前回、お話ししました。
※それを証明したのが、コーネル大学の心理学者 デヴィット・ダニング博士、ジャスティン・クルーガー博士の行った研究です
自分の能力を高く評価した人ほど、実はその能力が低かったこと、反対に自分の能力を低く見積もった人は能力が高かったことがわかったのです(ダニング = クルーガー効果、と呼ばれています)
前回の詳細はこちら

では、自分の判断力不足を自覚し、不都合な情報を無視せずに後悔のない選択をするにはどうすればいいのでしょうか。
今回は、正常性バイアスの落とし穴から逃れるためのテクニックをご紹介します。
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選択力を鈍らせる5つのバイアス
正常性バイアスにとらわれずに合理的な選択ができるテクニック「WRAP(ラップ)」
正常性バイアスを避け、合理的な判断を下す方法として挙げられているのが「WRAP(ラップ)」です。
※こちらはスタンフォード大学ビジネススクール教授 チップ・ハース博士と、デューク大学 社会企業アドバンスメント・センターのダン・ハース シニアフェローの、ハース兄弟が考案したものです
「WRAP」は、次の4つのステップに分かれています。
- 選択肢を広げる(Widen Your Options)
- 仮説の現実性を確かめる(Reality Test Your Assumptions)
- 決断の前に距離を置く(Attain Distance Before Deciding)
- 誤りに備える(Prepare To Be Wrong)
このテクニックを使うには具体的にどうすればいいかについて、その例として、自分が住んでいる地域に災害による避難勧告が出たことが取り上げられています。
「WRAP」の4つのステップにもとづき、避難勧告を受けて避難するか、あるいは避難しないかを考えます。
ステップ1 選択肢を広げる
ハース兄弟はまず、問いの立て方として、そもそも二択にするのは間違っている、と指摘をしているそうです。
「避難するか、しないか」「買うか、買わないか」「会社をやめるか、やめないか」
などの二択での問いは、自動的に視野を狭めてしまい、正常性バイアスを働きやすくさせてしまいます。
ゆえにバイアスから逃れるためには、
「避難をしないと、どういうリスクが生じるのか。どれくらい危険か」
「避難するといっても、どこに行けばよいのか。避難するための手段はいくつあるのか」
「避難する前に想定しておくべきことは何か」
など、選択肢の幅を広げて考えるようにしましょう。
ステップ2 仮説の現実性を確かめる
「同規模の災害時、避難しなかった人たちはどうなったのか。それはどれくらいの可能性で起こり得たことなのか」
など、過去の事例をもとにして、仮説がどれほど現実味をおびえているかを確かめます。
ただ、ここですでに正常性バイアスが働き、自分のいまの考えに合うような事例(避難しなくても大丈夫だったという報告)ばかりを見てしまうこともあります。
そのため、多方面から情報をチェックすることが大切です。
ステップ3 決断の前に距離を置く
いざ、どちらかに決めるという段階で、瞑想する時間を10分はさむなど、意思決定を保留する時間を取りましょう、と勧められています。
「自分が当事者ではなく、友人から相談されたときはどんなアドバイスを送るだろうか」と、客観的に状況を見られるイメージをするのもいい、といわれています。
ステップ4 誤りに備える
ステップ3までを踏み、できる限り合理的な選択をしたと思っても、後悔することはあり得ます。
その場合、もし「最悪の結果」が生じたときには次に何をすべきかをあらかじめ考えておくことで、さらなる悪い事態に陥ることを避けられます。
例でいえば、「避難しないことを選んだが、実際に災害に巻き込まれてしまった。そのときに取るべき最善の行動とは何か、そのために準備すべきことは何か」を想定しておきましょう。
以上が、「WRAP」の4つのステップです。
これは、危険が想定されるケースでの行動選択以外でも、「ものを買うか、買わないか」「意見を言うべきか、言わないべきか」など、日常のあらゆる場面で生かせるテクニックですね。
選択を迫られるときには、この「WRAP」を思い出され、ぜひ実践してみてください。それが正常性バイアスの危険から、あなたを守ることになります。
次回は、「選択力を鈍らせてしまう5つのバイアス」の最後“メモリーバイアス”についてお話ししていきます。
まとめ
- 自分に都合の悪い情報を無視する“正常性バイアス”を避ける方法として、「WRAP」をご紹介しました。選択を迫られたときには、以下の4つのステップを踏むことで、バイアスの影響を少なくし、合理的な選択ができるようになります
- 選択肢を広げる-
「~するか、しないか」と、二択で問いを立てるのではなく、いろいろな可能性を考慮し、選択の幅を広めましょう - 仮説の現実性を確かめる-
過去の事例をもとにして、仮説がどれほど現実味をおびえているかを確かめましょう - 決断の前に距離を置く-
少しでも決断を保留する時間を設けましょう - 誤りに備える-
選択の結果、最悪の事態に陥ってしまったときを想定し、その際に取るべき行動をシミュレーションしておきましょう
- 選択肢を広げる-
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