メンタリストで有名なDaiGoさんの『後悔しない超選択術』を通して、合理的な選択をして幸せに生きる方法をご紹介しています。
今回はその20回目です。
前回は、「選択力を鈍らせてしまう5つのバイアス」の中の、サンクコスト・バイアスへの対処法についてお話ししました。
サンクコストとは「埋没費用」のことであり、「すでに支払ってしまい、もう戻ってはこない費用や労力、時間」のことを指します。
このサンクコストにこだわることで、合理的な判断ができなくなるのがサンクコスト・バイアスです。
そのサンクコスト・バイアスの原因が「過去へのこだわり」であること、
ゆえにそれを手放すには「過去ではなく今に目を向ければいい」こと、
過去ではなく今に注目をするには「マインドフルネス瞑想」が効果的であることをお話ししました。
「マインドフルネス瞑想」とは、呼吸をカウントしながら「今、ここ」の状態に集中することです(目安となる時間は、1回15分)。
マインドフルネス瞑想によって今に意識を向ければ、サンクコスト・バイアスの悪影響を抑えることができるのです。
そのマインドフルネス瞑想の方法が、以下の4つのプロセスで紹介されていました。
- 意識を呼吸に集中する
- 雑念が浮かんでくる
- 雑念と向き合う
- 意識を再び呼吸に集中する
この4つのプロセスを習慣化することで、自制心が強まり、サンクコスト・バイアスの影響を小さくすることが可能になります。
詳細はこちら(前回の記事)

今回は、「選択力を鈍らせてしまう5つのバイアス」の4番目である“正常性バイアス”をご紹介していきます。
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選択力を鈍らせる5つのバイアス
4つ目の落とし穴-正常性バイアス
正常性バイアスとは、自分にとって都合の悪い情報を無視してしまうバイアスをいいます。
客観的に見れば、危険な状態、失敗しそうな状態であっても、
「今回は大丈夫」
「自分だけは問題ない」
と判断し、悪い結果につながる選択をしてしまう。そうなるのは、正常性バイアスの影響によるといえます。
例として、自然災害から逃げ遅れてしまった人、特殊詐欺の被害にあった人のことが紹介されていました。
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自然災害が発生し、自治体などから避難勧告が出ているにもかかわらず、
「こんなことは前にもあったが大丈夫だった。自分が被災するなんてことはない」
と正常性バイアスが働いて 危険を知らせる情報を無視してしまうと、逃げ遅れるという結果が引き起こってしまいます。
また、詐欺の被害にあった人の多くは、過去に騙された人の話を耳にしていても、
「自分は大丈夫。怪しいかどうかくらい、自分ならわかる」
という認識を持っていた、といわれています。
正常性バイアスが働いた結果、正確な判断ができなくなり、騙されてしまったといえるでしょう。
正常性バイアスを避け、後悔しない選択をする方法
では、悪い情報を無視して「自分だけは大丈夫」と思い込ませる正常性バイアスを避けて、後悔しない選択をするにはどうすればいいのでしょうか。
それには「正確な判断力を身につけて、判断力に自信を持てるようにすればいい」と思われるかもしれません。
しかし、正解はその逆であると指摘されています。
つまり「自分の判断力のなさ、選択する力のなさを認める」ことが、正常性バイアスを避けるための出発点であるのです。
多くの人は「自分には判断力がある」と信じています。その根拠のない自信によって状況を主観的に判断し、重要な情報を見落とし、後悔につながる選択をしてしまうのですね。
こうした「自分は大丈夫」と自信を持っている人ほど、限られた情報のみで物事を判断して正確な判断ができていないこと、また、能力も持ち合わせていないということがわかっています。
それを証明したものに、コーネル大学の心理学者 デヴィット・ダニング博士、ジャスティン・クルーガー博士の行った実験があります。
人は自分の能力を過大評価してしまう-「ダニング = クルーガー効果」
その実験の1つは、「ユーモアのセンス」に関する実験です。
参加者に30個のジョークを読ませ、どれほど面白かったかをそれぞれ評価してもらうテストを行いました。
このテストによって、その人がどれくらいユーモアを理解しているかを知ることができます。
そして両博士は、参加者を、テストの成績順に4分の1ずつ
- 最優秀グループ
- 平均より少し上のグループ
- 平均より下のグループ
- 底辺グループ
の4つのグループに振り分けました。
加えて、「あなたのユーモアの理解度は、同年代の中でどのくらいに位置していると思いますか?」
と自分のユーモアセンスについての自己評価を求めました(自己評価はパーセンテージで答える形式です)。
その結果、底辺グループは自分のたちのユーモアセンスを58%(平均より少し上)と自己評価しました。
ちなみに底辺グループのユーモアのセンスについてのテストの平均得点は、下から12%に位置する結果となったことから、底辺グループの人たちは自分のユーモアセンスを過大評価していたことがわかります。
一方で最優秀グループの人たちは自分のユーモアセンスを実際よりも低く見積もる傾向にあることもわかったのでした。
このような研究をはじめとする一連の研究の結論として、
「能力の低い人は自分のレベルを正しく評価できない」
「能力の低い人は他人のスキルも正しく評価できない」
ゆえに「能力の低い人は自分の能力を過大評価する」
といわれています。
この研究結果は、ダニング博士、クルーガー博士の名前にちなんで「ダニング = クルーガー効果」と呼ばれています。
自分は大丈夫、という過信が、合理的な判断を狂わせる、
ゆえに、自分の選択する力のなさを認めることが正常性バイアスを避けるために大切です。
では、自分の判断力の不足を自覚し、状況を冷静に見つめるには具体的にどうすればいいのでしょうか。
次回は、正常性バイアスを回避するための具体的な方法をご紹介していきます。
まとめ
- 自分にとって都合の悪い情報を無視し、限られた情報のみで状況を判断する働きが“正常性バイアス”です。「自分だけは大丈夫」という思いを持ち、自信のある人ほど騙され、後悔しやすいといわれています
- 正常性バイアスを避けるには、自分の判断力のなさ、選択の力のなさを認めることです
- 自分は能力があるという自信のある人は、実は能力が低いことがわかっています。能力の低い人ほど、能力への客観的な判断ができず、自分の能力を過大評価してしまうのです
続きの記事はこちら

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