心理学ワークショップ主催の ゆう です。
今回のワークショップには初めての方3名を含む、10名の方にご参加いただきました^^
お盆休みと重なったため、参加される方がおられるか不安でしたが、たくさんの方に来ていただき、とても嬉しく思いました。
今回のディスカッションのテーマは、「トラウマによって行動が決まる、という考え方の問題とは?」についてでした。
トラウマの影響はゼロではありませんが、それによって行動が決まると思ってしまうのは問題がありそうですね。
トラウマまでとはいなくても、やらないことへの言い訳をしてしまうことは私たちにもよくあることではないでしょうか?
言い訳をせずに、自己正当化をせずに物事に建設的に取り組むにはどうすればいいかについても意見を言っていただき、私自身も勉強になりました。
自分のこれまでの言動に引き当てて考えることで、より理解も深まって身につきやすいと、改めて感じました(^^)
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トラウマを否定する、アドラー心理学の「目的論」
今回のテーマは、
アドラー心理学から学ぶ 「トラウマを否定する“自立した生き方” 」
についてでした。
『嫌われる勇気』を読まれた多くの人がまずはじめに驚いたのは、この「トラウマの否定」ではないでしょうか?
トラウマとは、過去に受けた心的外傷のことを指します。
このトラウマという言葉をよく使うようになったのが、心理学者のフロイトですね。
フロイトは、このトラウマによって今の行動が決定される、と主張しました。これを「原因論」といいます。
たとえば、過去に家族から虐待などの心的外傷を受けたことで対人恐怖症となり、人に話しかけることができなくなってしまった、と考えている人がいたとします。
この考えには納得される方が多いと思います。トラウマ(この場合は家族からの虐待)によって対人恐怖症となり、今の行動が決定される、ということですね。
しかしアドラーは、「遺伝もトラウマもあなたを支配してはいない」と、トラウマによって現在の行動が決まるという原因論を否定し、「目的論」を提唱しました。
目的論は、私達にはまず目的があり、その目的を果たすために、過去の経験から目的に適うものを見つけ出している、という考えです。
先の例でいえば、まず「人に話しかけて拒否されたくない、傷つきたくない」という目的があり、その目的を果たすために、自らを正当化するために、過去の経験からその目的に適うもの(この場合は家族からの虐待)を選び取っている、ということです。
こんな目的論を聞くと、「家族から虐待を受けたことを軽視している」と思われそうですが、虐待の影響がゼロであった、とはいわれていません。そこからも影響は受けています。
しかし100%でもありません。心的外傷を受けようとも、それをバネにして自らの成長につなげ、いまは前向きに生きている人もいるのです。
これが原因論と目的論の違いですが、では原因論的な考え方(トラウマによって行動が決まる)の問題点を改めて考えてみましょう。
過去の原因は「解説」にはなっても「解決」にはならない
原因論の考え方の1つ目の問題点は、「過去に囚われる」ことです。
原因論は「今が苦しいのはトラウマのせい」ということなので、トラウマを無くさない限り、過去を変えない限り、悩みは解決しないことになります。
しかし過去は変えることができないので、今の苦しみもずっと変わらない、ということになりますね。
「トラウマが悪いんだ」と思えば、一時的には楽な気持ちになるかもしれませんが、根本的には気持ちは晴れないでしょう。トラウマへの怒りや恐れをずっと抱えたまま生きていかなくてはなりません。
アドラーは、
過去の原因は『解説』にはなっても『解決』にはならないだろう。
と語っています。
「私が苦しいのは過去のあれのせい、これのせい」といくら解説をしたとしても、それでは「解決」にはならないですね。
そもそも「あれのせい、これのせい」という解説自体も間違っています。
先の例でいうと、家族からの虐待を受けたとしても、すべての人が対人恐怖症になるわけではありませんね。「AのせいでBである」というのは実は、因果関係が成り立っていないのです。
このように、原因論的な考えでは過去に囚われ、根本的には気持ちが晴れないまま、トラウマへの怒りや恨みを抱えて生きていくことになります。
反対に目的論的な考え方では、目的を変えることで過去への意味づけも変わり、過去に囚われることはなくなるのです。
次回は、原因論的な考え方の、2つ目の問題点についてお話ししていきます。
まとめ
- 過去に受けた心的外傷-トラウマ-によって今の行動が決定されるという考えは「原因論」、対してアドラー心理学では、私達には目的があり、目的に応じて過去の経験を選び出して行動しているという考えは「目的論」が提唱されています
- 原因論の問題点として「過去に囚われる」ことが挙げられます。今の苦しみがトラウマのせいだとすれば、過去を変えない限りは苦しみはなくならないことになり、過去は変えられないので、ずっと苦しみを抱えて生きなければならなくなるのです
- アドラーは「過去の原因は『解説』にはなっても『解決』にはならないだろう」と語っています。トラウマを原因と見れば一時的には楽になるかもしれませんが、根本的には問題は解決しないです
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