5/24(木) 「トラウマはあなたを支配してはいない」アドラーが唱えた目的論とは?-アドラー心理学から学ぶ トラウマを否定する“自立した生き方”1|心理学勉強会レポート40

心理学ワークショップ主催の ゆう です。

今回のワークショップには初めての方3名を含む、7名の方にご参加いただきました^^

参加された方は意欲的で親しみやすい方ばかりで、おかげさまでリラックスしてお話しすることができました。

またワークショップでは、ある心理的な問題に対して、参加された方同士で意見を言っていただくディスカッションの時間も設けているのですが、ディスカッションもとても盛り上がったと感じます。

皆さんのご協力によって楽しく充実した時間を過ごすことができ、今回もありがたく思いました(>_<)

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「トラウマをよって行動が決定される」という原因論

今回のテーマは、
アドラー心理学から学ぶ 「トラウマを否定する“自立した生き方”
についてでした。

『嫌われる勇気』が大ヒットし、またたく間にブームとなったのがアドラー心理学ですね。

『嫌われる勇気』はすでに読んだ、あるいは名前は聞いたことがあり興味はある、という方も多いと思います。

アドラー心理学は、「常識へのアンチテーゼ」の側面もあるといわれ、これまで常識と思われたことは実は誤りだと提唱されてところも多いです。
それが多くの人の注目を集める要因にもなりましたね。

その「常識へのアンチテーゼ」の1つが「トラウマを否定する」ことです。

トラウマとは、「過去に受けた『心的外傷』」のことです。過去に受けた虐待、犯罪や事故、いじめ、暴力などによって精神的に受けた傷のことをいいます。

トラウマという言葉を多用し始めた人が、心理学者のフロイトですね。

フロイトは、
「トラウマによって私達の行動が決定づけられる。今が苦しいのはトラウマのせい」
という主張をしました。

このような考え方を「原因論」といわれます。過去の経験が原因となっていまの行動が決定されている、という考え方ですね。

仮に、対人恐怖症で、人に話しかけるのが恐い、そのせいで常に一人で過ごしているような人がいたとします。

そしてその人が幼い頃に家庭内で暴力を受けたという経験をしていれば、家庭内暴力がトラウマとなり、そのトラウマが原因でこの子は対人恐怖症となってしまい、いま苦しんでいるんだ、と考えるでしょう。

ところがアドラーは、まったく逆の主張をしているのです。

「トラウマはあなたを支配してはいない」アドラーの主張する目的論とは?

アドラーは端的にこう語っています。

遺伝もトラウマもあなたを支配してはいない

遺伝やトラウマがあなたの行動を決定している、という原因論とはまるで反対の主張ですね(アドラーは、フロイトの学会に招かれて、ともに学びを深めていましたが、原因論とアドラーの主張とが決定的に異なるため、アドラーはフロイトの学会から去った、といわれています)。

アドラーは徹底して、「トラウマが行動を決定づける」という考え方(原因論)を否定しています。

トラウマの存在自体はアドラーも否定はしていないのですが、そのトラウマが人間の行動を決定づける、という考えには断固として反対しているのです。

ではアドラーは、人間の行動は何によって決まると教えているのでしょうか? このように語られています。

いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない

われわれは自分の経験によるショック──いわゆるトラウマ──に苦しむのではなく、経験の中から目的に適うものを見つけ出す

いかなる経験もそれ自体は成功や失敗の原因ではなく、私達にはまず目的があり、その目的に適うものを経験の中から見つけ出している、といわれています。

このアドラーの考えは、原因論に対して「目的論」といわれます。

先の対人恐怖症の子の例でいえば、この子は家庭内暴力が原因となって対人恐怖症になったのではありません。
ある目的があり、その目的を果たすために対人恐怖症をつくり出した、そしてその対人恐怖症の原因として過去の経験の中で最も目的に適う経験(過去の家庭内暴力)を選んだ、ということです。

こんなことを聞けば、当然、反発の気持ちを抱く方もいると思います。過去に受けた暴力を軽視するつもりかとか、悪気のないこの子を責める気か、など。

確かに家庭内暴力は許されることではなく、なくさなければなりませんし、家庭内暴力がこの子のトラウマとなり、いくらかの影響を与えたことは否めません。

しかし、トラウマをいまの不幸の原因としていては現状の改善はできません。家庭内暴力という経験そのものを消さない限り対人恐怖症がなくならないとするなら、この子は対人恐怖症で苦しみ続けることになってしまいます。

この子が自分でも気づいていない目的を認識させて、その目的を変えてこそ、現状を改善することができるのですね。

ではこの子の目的とはいったい何なのか?
また原因論的な考え方の問題とは何なのでしょうか?

それらについて次回、新たに具体例も追加しつつ、お話ししていきます。

まとめ

  • アドラー心理学は「常識へのアンチテーゼ-これまでの常識は誤りと提唱する-の側面がある」といわれています。その1つが「トラウマの否定」です。アドラー心理学では、トラウマによって行動が決定されるという「原因論」が否定されています
  • アドラー心理学では、トラウマの存在自体は否定されていないものの、それが行動を決定づけるという理論は否定し、「私達たちには目的があり、その目的に適う経験を見つけ出し、行動を選択している」と教えられているのです
  • 対人恐怖症の子供の例でいえば、子供には目的があり、その目的に最も適う過去の経験を見つけ出し、対人恐怖症をつくり出していると指摘されています。もちろん過去の経験がいまの状況と無関係ではありませんが、トラウマのせいにすれば過去に縛られ、苦しみ続けることになるのです

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